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トウキョウ建築コレクション2009-全国修士設計展 総評2009

 大学院の設計教育は、教員側にとってもなやましい。大学院作品の出来映えが、未来を担う建築家の力量となるであろう。
 欧米の大学では、建築教育と建築家資格に絡むDiplomaの関係は確立されている。我が国の設計系大学院での建築教育は、空間研究と実務教育を合わせ、まだ、試行錯誤の段階であり、方向性は明確ではないが、その分、欧米の建築家資格に絡む大学教育と異なる、独自の可能性も伺える。
 今回、一次審査参加の全作品通して思えたのは、当然と言えば当然であるが、リアリティーのあるデザインとその密度と思考深度は深い。そして、明らかであるのは、確実に欧米のDiploma レベルの設計力は伺えると思えた。
 一次審査から公開審査への選択作品は、純粋な空間研究に根ざした形態追求した空間の可能性、社会的問題を真正面から取り組んだ建築、空間のもつ体験・体感的な建築の可能性に着目したものだった。いずれにしても、修士作品には、挑戦的姿勢と着眼と手法のユニークさは必要である。

木村博昭  建築家 
京都工芸繊維大学、大学院、建築設計学専攻教授