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TOWER HOUSE 長浜は、歴史名所であり秀吉のゆかりの地として知られる。大阪から約120km、北陸圏になるが通勤の出来る最北の地であろう。距離感のわりに大阪人には親近感があり、不思議と地域性の隔たりを感じない。歴史地区は、昔ながらの街並みが残り地域性も伺えるが、スプロール化している新興の生活圏では、特に地域性は見れないし、この現象は長浜に限らずどの地方都市でもそうであろう。<br />全体は3層で、敷地に客と住宅の5台分のパーキングスペースを確保した美容室併用の専用住宅である。2つの異なる用途を立体に組み合わせ、入り口は別々に分けている。外観は、単純な長箱形をしたタワー状の単純な白いボックスであるが、内部はその印象に反し、1階のカットスペースは、和と洋、新しさと古さが混在した時代感覚がない空間とし、上階は、小住宅ながらも空間体験を確保する為に、断面にメリハリのある高低差のある空間変化を設けた。<br />ここでので試みたのは、スチールシートのより有効な構造体的働きと工法のシステム化である。外壁は、開口部を考慮しながら、リブ状にH形鋼を補強した基本パネルとなる横1800mmx縦9665mmを、中心の大黒柱となる一本の丸柱と、この構造壁を梁で連結している。立込は、隅の1/4円のコーナーパネルを最初に立て、順次パネルをボルトで拘束し、そして、構造溶接とシール溶接で全体を一体化した。<br />鉄の最大の利点は、やはり、その強度と加工精度にある。mm単位で工場加工が可能であること、地域性に影響されずに施行精度が確保でき、建築のシステム化が進む時代に適した材料である。<br />近年、建築家も、日本中、欧米、中国と海外からの相談や地域を問わず設計をすることが多くなった。インターネットや情報力は、仕事と直接に結びついている。それは、設計者にとっても地域性がなく、嘗ての1930年代のインターナショナル・スタイルの白いコンクリート建築が普及したように何処でも同質の建築が追求された状況と似ている。問題は、建築の場所性の意味は薄れ、プレハブの規格化でもなく、固有性を持ちながら、プロダクトのようにクォリティーを確保する方法が必要であり、時代性や共有する価値観がより意味を持つ時代である。<br /><br />木村博昭<br /><br /><br />構造コメント<br />「外壁のスチールシート(板厚9mm)を耐震要素に利用できないか?」というのが設計者のかねてからの要望であった。この要望に対して,幅1800mmのスチールシートの両端にリブ柱を溶接し組立てたのが「鉄の教会」であった。今回の建物についても同様の架構形式を採用している。ただし,3階建てであり住宅である。窓との兼合いからスチールシートを耐震要素にできる箇所も限られた。結果,リブ柱には高い軸力が作用することになったため,H形鋼H−100×100×6×8を柱として900mmピッチで配置した。スパンが大きくなる部位および軸力変動が大きな部位には角形鋼管□−100×150×9を用いている。スチールシートを耐震要素にするためには,スチールシートと柱および梁を確実に溶接接合する必要がある。一方,溶接を多用すると溶接歪が大きくなる。しかも,この建物では現場溶接が多くなるディテールとなってしまったため,溶接歪の矯正が困難になることが予測された。施工者と協議を重ね,必要最小限の溶接で構造耐力が確保できるよう溶接の仕様を決定するとともに,現場溶接の際に歪を拘束できる治具を工夫してもらった。<br /><br />白髪誠一 北條稔郎 TOWER HOUSE 長浜は、歴史名所であり秀吉のゆかりの地として知られる。大阪から約120km、北陸圏になるが通勤の出来る最北の地であろう。距離感のわりに大阪人には親近感があり、不思議と地域性の隔たりを感じない。歴史地区は、昔ながらの街並みが残り地域性も伺えるが、スプロール化している新興の生活圏では、特に地域性は見れないし、この現象は長浜に限らずどの地方都市でもそうであろう。<br />全体は3層で、敷地に客と住宅の5台分のパーキングスペースを確保した美容室併用の専用住宅である。2つの異なる用途を立体に組み合わせ、入り口は別々に分けている。外観は、単純な長箱形をしたタワー状の単純な白いボックスであるが、内部はその印象に反し、1階のカットスペースは、和と洋、新しさと古さが混在した時代感覚がない空間とし、上階は、小住宅ながらも空間体験を確保する為に、断面にメリハリのある高低差のある空間変化を設けた。<br 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/>「外壁のスチールシート(板厚9mm)を耐震要素に利用できないか?」というのが設計者のかねてからの要望であった。この要望に対して,幅1800mmのスチールシートの両端にリブ柱を溶接し組立てたのが「鉄の教会」であった。今回の建物についても同様の架構形式を採用している。ただし,3階建てであり住宅である。窓との兼合いからスチールシートを耐震要素にできる箇所も限られた。結果,リブ柱には高い軸力が作用することになったため,H形鋼H−100×100×6×8を柱として900mmピッチで配置した。スパンが大きくなる部位および軸力変動が大きな部位には角形鋼管□−100×150×9を用いている。スチールシートを耐震要素にするためには,スチールシートと柱および梁を確実に溶接接合する必要がある。一方,溶接を多用すると溶接歪が大きくなる。しかも,この建物では現場溶接が多くなるディテールとなってしまったため,溶接歪の矯正が困難になることが予測された。施工者と協議を重ね,必要最小限の溶接で構造耐力が確保できるよう溶接の仕様を決定するとともに,現場溶接の際に歪を拘束できる治具を工夫してもらった。<br /><br />白髪誠一 北條稔郎 TOWER HOUSE 長浜は、歴史名所であり秀吉のゆかりの地として知られる。大阪から約120km、北陸圏になるが通勤の出来る最北の地であろう。距離感のわりに大阪人には親近感があり、不思議と地域性の隔たりを感じない。歴史地区は、昔ながらの街並みが残り地域性も伺えるが、スプロール化している新興の生活圏では、特に地域性は見れないし、この現象は長浜に限らずどの地方都市でもそうであろう。<br />全体は3層で、敷地に客と住宅の5台分のパーキングスペースを確保した美容室併用の専用住宅である。2つの異なる用途を立体に組み合わせ、入り口は別々に分けている。外観は、単純な長箱形をしたタワー状の単純な白いボックスであるが、内部はその印象に反し、1階のカットスペースは、和と洋、新しさと古さが混在した時代感覚がない空間とし、上階は、小住宅ながらも空間体験を確保する為に、断面にメリハリのある高低差のある空間変化を設けた。<br />ここでので試みたのは、スチールシートのより有効な構造体的働きと工法のシステム化である。外壁は、開口部を考慮しながら、リブ状にH形鋼を補強した基本パネルとなる横1800mmx縦9665mmを、中心の大黒柱となる一本の丸柱と、この構造壁を梁で連結している。立込は、隅の1/4円のコーナーパネルを最初に立て、順次パネルをボルトで拘束し、そして、構造溶接とシール溶接で全体を一体化した。<br />鉄の最大の利点は、やはり、その強度と加工精度にある。mm単位で工場加工が可能であること、地域性に影響されずに施行精度が確保でき、建築のシステム化が進む時代に適した材料である。<br />近年、建築家も、日本中、欧米、中国と海外からの相談や地域を問わず設計をすることが多くなった。インターネットや情報力は、仕事と直接に結びついている。それは、設計者にとっても地域性がなく、嘗ての1930年代のインターナショナル・スタイルの白いコンクリート建築が普及したように何処でも同質の建築が追求された状況と似ている。問題は、建築の場所性の意味は薄れ、プレハブの規格化でもなく、固有性を持ちながら、プロダクトのようにクォリティーを確保する方法が必要であり、時代性や共有する価値観がより意味を持つ時代である。<br /><br />木村博昭<br /><br /><br />構造コメント<br />「外壁のスチールシート(板厚9mm)を耐震要素に利用できないか?」というのが設計者のかねてからの要望であった。この要望に対して,幅1800mmのスチールシートの両端にリブ柱を溶接し組立てたのが「鉄の教会」であった。今回の建物についても同様の架構形式を採用している。ただし,3階建てであり住宅である。窓との兼合いからスチールシートを耐震要素にできる箇所も限られた。結果,リブ柱には高い軸力が作用することになったため,H形鋼H−100×100×6×8を柱として900mmピッチで配置した。スパンが大きくなる部位および軸力変動が大きな部位には角形鋼管□−100×150×9を用いている。スチールシートを耐震要素にするためには,スチールシートと柱および梁を確実に溶接接合する必要がある。一方,溶接を多用すると溶接歪が大きくなる。しかも,この建物では現場溶接が多くなるディテールとなってしまったため,溶接歪の矯正が困難になることが予測された。施工者と協議を重ね,必要最小限の溶接で構造耐力が確保できるよう溶接の仕様を決定するとともに,現場溶接の際に歪を拘束できる治具を工夫してもらった。<br /><br />白髪誠一 北條稔郎 TOWER HOUSE 長浜は、歴史名所であり秀吉のゆかりの地として知られる。大阪から約120km、北陸圏になるが通勤の出来る最北の地であろう。距離感のわりに大阪人には親近感があり、不思議と地域性の隔たりを感じない。歴史地区は、昔ながらの街並みが残り地域性も伺えるが、スプロール化している新興の生活圏では、特に地域性は見れないし、この現象は長浜に限らずどの地方都市でもそうであろう。<br />全体は3層で、敷地に客と住宅の5台分のパーキングスペースを確保した美容室併用の専用住宅である。2つの異なる用途を立体に組み合わせ、入り口は別々に分けている。外観は、単純な長箱形をしたタワー状の単純な白いボックスであるが、内部はその印象に反し、1階のカットスペースは、和と洋、新しさと古さが混在した時代感覚がない空間とし、上階は、小住宅ながらも空間体験を確保する為に、断面にメリハリのある高低差のある空間変化を設けた。<br />ここでので試みたのは、スチールシートのより有効な構造体的働きと工法のシステム化である。外壁は、開口部を考慮しながら、リブ状にH形鋼を補強した基本パネルとなる横1800mmx縦9665mmを、中心の大黒柱となる一本の丸柱と、この構造壁を梁で連結している。立込は、隅の1/4円のコーナーパネルを最初に立て、順次パネルをボルトで拘束し、そして、構造溶接とシール溶接で全体を一体化した。<br />鉄の最大の利点は、やはり、その強度と加工精度にある。mm単位で工場加工が可能であること、地域性に影響されずに施行精度が確保でき、建築のシステム化が進む時代に適した材料である。<br />近年、建築家も、日本中、欧米、中国と海外からの相談や地域を問わず設計をすることが多くなった。インターネットや情報力は、仕事と直接に結びついている。それは、設計者にとっても地域性がなく、嘗ての1930年代のインターナショナル・スタイルの白いコンクリート建築が普及したように何処でも同質の建築が追求された状況と似ている。問題は、建築の場所性の意味は薄れ、プレハブの規格化でもなく、固有性を持ちながら、プロダクトのようにクォリティーを確保する方法が必要であり、時代性や共有する価値観がより意味を持つ時代である。<br /><br />木村博昭<br /><br /><br />構造コメント<br />「外壁のスチールシート(板厚9mm)を耐震要素に利用できないか?」というのが設計者のかねてからの要望であった。この要望に対して,幅1800mmのスチールシートの両端にリブ柱を溶接し組立てたのが「鉄の教会」であった。今回の建物についても同様の架構形式を採用している。ただし,3階建てであり住宅である。窓との兼合いからスチールシートを耐震要素にできる箇所も限られた。結果,リブ柱には高い軸力が作用することになったため,H形鋼H−100×100×6×8を柱として900mmピッチで配置した。スパンが大きくなる部位および軸力変動が大きな部位には角形鋼管□−100×150×9を用いている。スチールシートを耐震要素にするためには,スチールシートと柱および梁を確実に溶接接合する必要がある。一方,溶接を多用すると溶接歪が大きくなる。しかも,この建物では現場溶接が多くなるディテールとなってしまったため,溶接歪の矯正が困難になることが予測された。施工者と協議を重ね,必要最小限の溶接で構造耐力が確保できるよう溶接の仕様を決定するとともに,現場溶接の際に歪を拘束できる治具を工夫してもらった。<br /><br />白髪誠一 北條稔郎 TOWER HOUSE 長浜は、歴史名所であり秀吉のゆかりの地として知られる。大阪から約120km、北陸圏になるが通勤の出来る最北の地であろう。距離感のわりに大阪人には親近感があり、不思議と地域性の隔たりを感じない。歴史地区は、昔ながらの街並みが残り地域性も伺えるが、スプロール化している新興の生活圏では、特に地域性は見れないし、この現象は長浜に限らずどの地方都市でもそうであろう。<br />全体は3層で、敷地に客と住宅の5台分のパーキングスペースを確保した美容室併用の専用住宅である。2つの異なる用途を立体に組み合わせ、入り口は別々に分けている。外観は、単純な長箱形をしたタワー状の単純な白いボックスであるが、内部はその印象に反し、1階のカットスペースは、和と洋、新しさと古さが混在した時代感覚がない空間とし、上階は、小住宅ながらも空間体験を確保する為に、断面にメリハリのある高低差のある空間変化を設けた。<br />ここでので試みたのは、スチールシートのより有効な構造体的働きと工法のシステム化である。外壁は、開口部を考慮しながら、リブ状にH形鋼を補強した基本パネルとなる横1800mmx縦9665mmを、中心の大黒柱となる一本の丸柱と、この構造壁を梁で連結している。立込は、隅の1/4円のコーナーパネルを最初に立て、順次パネルをボルトで拘束し、そして、構造溶接とシール溶接で全体を一体化した。<br />鉄の最大の利点は、やはり、その強度と加工精度にある。mm単位で工場加工が可能であること、地域性に影響されずに施行精度が確保でき、建築のシステム化が進む時代に適した材料である。<br />近年、建築家も、日本中、欧米、中国と海外からの相談や地域を問わず設計をすることが多くなった。インターネットや情報力は、仕事と直接に結びついている。それは、設計者にとっても地域性がなく、嘗ての1930年代のインターナショナル・スタイルの白いコンクリート建築が普及したように何処でも同質の建築が追求された状況と似ている。問題は、建築の場所性の意味は薄れ、プレハブの規格化でもなく、固有性を持ちながら、プロダクトのようにクォリティーを確保する方法が必要であり、時代性や共有する価値観がより意味を持つ時代である。<br /><br />木村博昭<br /><br /><br />構造コメント<br />「外壁のスチールシート(板厚9mm)を耐震要素に利用できないか?」というのが設計者のかねてからの要望であった。この要望に対して,幅1800mmのスチールシートの両端にリブ柱を溶接し組立てたのが「鉄の教会」であった。今回の建物についても同様の架構形式を採用している。ただし,3階建てであり住宅である。窓との兼合いからスチールシートを耐震要素にできる箇所も限られた。結果,リブ柱には高い軸力が作用することになったため,H形鋼H−100×100×6×8を柱として900mmピッチで配置した。スパンが大きくなる部位および軸力変動が大きな部位には角形鋼管□−100×150×9を用いている。スチールシートを耐震要素にするためには,スチールシートと柱および梁を確実に溶接接合する必要がある。一方,溶接を多用すると溶接歪が大きくなる。しかも,この建物では現場溶接が多くなるディテールとなってしまったため,溶接歪の矯正が困難になることが予測された。施工者と協議を重ね,必要最小限の溶接で構造耐力が確保できるよう溶接の仕様を決定するとともに,現場溶接の際に歪を拘束できる治具を工夫してもらった。<br /><br />白髪誠一 北條稔郎 

TOWER HOUSE

2005.04-06.01

長浜は、歴史名所であり秀吉のゆかりの地として知られる。大阪から約120km、北陸圏になるが通勤の出来る最北の地であろう。距離感のわりに大阪人には親近感があり、不思議と地域性の隔たりを感じない。歴史地区は、昔ながらの街並みが残り地域性も伺えるが、スプロール化している新興の生活圏では、特に地域性は見れないし、この現象は長浜に限らずどの地方都市でもそうであろう。
全体は3層で、敷地に客と住宅の5台分のパーキングスペースを確保した美容室併用の専用住宅である。2つの異なる用途を立体に組み合わせ、入り口は別々に分けている。外観は、単純な長箱形をしたタワー状の単純な白いボックスであるが、内部はその印象に反し、1階のカットスペースは、和と洋、新しさと古さが混在した時代感覚がない空間とし、上階は、小住宅ながらも空間体験を確保する為に、断面にメリハリのある高低差のある空間変化を設けた。
ここでので試みたのは、スチールシートのより有効な構造体的働きと工法のシステム化である。外壁は、開口部を考慮しながら、リブ状にH形鋼を補強した基本パネルとなる横1800mmx縦9665mmを、中心の大黒柱となる一本の丸柱と、この構造壁を梁で連結している。立込は、隅の1/4円のコーナーパネルを最初に立て、順次パネルをボルトで拘束し、そして、構造溶接とシール溶接で全体を一体化した。
鉄の最大の利点は、やはり、その強度と加工精度にある。mm単位で工場加工が可能であること、地域性に影響されずに施行精度が確保でき、建築のシステム化が進む時代に適した材料である。
近年、建築家も、日本中、欧米、中国と海外からの相談や地域を問わず設計をすることが多くなった。インターネットや情報力は、仕事と直接に結びついている。それは、設計者にとっても地域性がなく、嘗ての1930年代のインターナショナル・スタイルの白いコンクリート建築が普及したように何処でも同質の建築が追求された状況と似ている。問題は、建築の場所性の意味は薄れ、プレハブの規格化でもなく、固有性を持ちながら、プロダクトのようにクォリティーを確保する方法が必要であり、時代性や共有する価値観がより意味を持つ時代である。

木村博昭


構造コメント
「外壁のスチールシート(板厚9mm)を耐震要素に利用できないか?」というのが設計者のかねてからの要望であった。この要望に対して,幅1800mmのスチールシートの両端にリブ柱を溶接し組立てたのが「鉄の教会」であった。今回の建物についても同様の架構形式を採用している。ただし,3階建てであり住宅である。窓との兼合いからスチールシートを耐震要素にできる箇所も限られた。結果,リブ柱には高い軸力が作用することになったため,H形鋼H−100×100×6×8を柱として900mmピッチで配置した。スパンが大きくなる部位および軸力変動が大きな部位には角形鋼管□−100×150×9を用いている。スチールシートを耐震要素にするためには,スチールシートと柱および梁を確実に溶接接合する必要がある。一方,溶接を多用すると溶接歪が大きくなる。しかも,この建物では現場溶接が多くなるディテールとなってしまったため,溶接歪の矯正が困難になることが予測された。施工者と協議を重ね,必要最小限の溶接で構造耐力が確保できるよう溶接の仕様を決定するとともに,現場溶接の際に歪を拘束できる治具を工夫してもらった。

白髪誠一 北條稔郎 

所在地
滋賀県長浜市
延床面積
139.92㎡